『最遊記歌劇伝-異聞-』感想

激しいアクションが盛り沢山だった今回の舞台、大きな事故やお怪我もなく完走して頂けたようで本当によかったです。
ヒトコトで言ってめちゃくちゃ好きな作品です。どこがどう好きかは後でアホみたいに語るのでとりあえず。
今回の舞台内容は平たく言うと『最遊記異聞 feat.月闇』って感じです。最遊記とはいえ御存知の通り三蔵一行は出て来ません。歌劇伝シリーズとしても、光明・烏哭・待覚以外のキャラクターは今回ほぼ初参戦のフレッシュな役者さん達で構成されています。その若いパワーを限界まで絞り出して頂いた、アツくてコミカルで元気になれる一作です。
原作の異聞のノリが好きだなって思って下さる方、または月闇コンビをこじらせた特殊な方、あるいは汗だくで闘う男子達の青春群像がお好きな方には、ぜひぜひ観て頂きたいなと。
あと読者さんから「キャストにカーネル(宗迅)がいないのは何故か」というお声もございましたが、ちゃんとカーネルも存在する世界線ですのでご安心下さい、とだけ(笑)。
現在『楽天TV』にて、9月6日昼夜公演の生放送映像をアンコール配信中(10月31日まで)
コチラから→【楽天TV】『最遊記歌劇伝-異聞-』アンコール配信 ※楽天TVではこれまでの歌劇伝動画も配信中です。
また『最遊記歌劇伝-異聞-』DVDの発売も決定しております。詳細は随時、歌劇伝さんの公式Twitterまたは公式サイトにてご確認下さい。
今まで歌劇伝シリーズには『原作者は最低限しか手を出さない、出来上がったものを看て愉しむ!』というスタンスを貫いて来たのですが(餅は餅屋だと思うので)、今回は原作素材がコミックス1冊分のみとあまりに少ない事や、光明&烏哭の原作では描かれていない時代のシーンが内容に含まれる事となった為、初めてちょっとだけ制作段階から絡ませて頂いてました。稽古場撮影動画も拝見したり、公演前に顔合わせさせて頂いたり(これは最遊記原画展の会場のすぐ側が稽古場だったのでたまたまお邪魔できた)、作り上げられる過程をガッツリ目の当たりにして来た初めての舞台なので正直いつものような他人事じゃねぇな感が半端無かったです。ちょっと覗いただけでも相当ハードでまさに『修行』のような稽古を重ねてらしたので「無事に成功してくれ頼む!お客さん愉しんでくれるといいねぇ!」っていう祈るようなオヤゴコロがいつも以上に強く、その目線で感想書いたら私情が入り過ぎるのではという懸念があったのですが、でもまぁ思い入れがキモイのは毎度の事なのでいつも通り長いの書きます。できるだけいつも通りの観音ポジ目線で。
【※以下の感想は、劇場で観劇した9月8日夜公演と、楽天TVにて配信中の9月6日昼&夜公演分を主なベースとしております。ネタバレしかありませんのでご了承下さい】

冒頭の健邑さん、Burialで藤田玲氏が演じた健邑のシルエット(首の傾げ方や腕の伸ばし方等)を完コピなさっていたのがお見事。観劇後に集まった鯛さんやふっきーさん太陽君も「あの健邑どの人が演ってたの?褒めたいから連れて来て!」ってなってた(笑)
剛内の亡骸に話しかける光明と、無邪気に桃醍に駆け寄ってペシャッと地面に叩き付けられる(桃醍に置いていかれる)峯明……という対の構図が憎い。玄灰の待つ『上』に上がって行く桃ちゃんと、カラスに掻き消されてゆく剛内が切ない。開始早々えぐって来た歌劇伝さん容赦ない。
光明と峯明・烏哭と健邑がそれぞれ対でリンクした立ち姿になる瞬間がよいですね。こういう別時空・別時間軸を同じ板の上に並べて個別進行までできるから舞台表現って面白い。
こうみょ様のお歌の「♪悔ゥやむかも〜」の部分めっちゃ好きなの誰か分かって。
『したたかで天然で超マイペースな光明パイセンと、それに降り回されツッコミにまわる厨二病抜けてない頃の斜に構えた烏哭(18)』という私の乱暴な説明を、見事に表現して下さってました。
新規の異聞組に月闇が添えられた事で、歌劇伝シリーズとしての安定感が生まれて良かったと改めて。
でもって、二十年前と後との待覚法師の演じ分けすごい。動きとか声の出し方とかに二十年分の時間がちゃんとある。違うのは頭髪だけじゃない。
稽古中に唐橋さんが「今度は俺が藤田玲に寄せた役作り中」と仰ってたけど、若烏哭がイラっとした「あの。」って言い方とかほんとに藤田健邑の口調でうわスゲェってなった。
待覚の発言に「え?は?」ってなるたびにちょいちょい目配せし合う先輩&後輩かわいい。
歌の最中も、わちゃわちゃ可愛いやり取りしてる丸ちゃん&義兆とか、しゃしゃり出る峯明にムカッてなってるお蝶とか、チンピラ同士がカチ合った状態の抄雲道卓とか、峯明にライバル心隠せてない青藍とか、ウザ絡みして隆善に引かれる義兆とか、いちいち各キャラが個性的に動いてるのでやっぱり何処見たらいいのかわかんない。
そして月闇さんの歌声&存在感の貫禄よな。この二人が出て来ると場が引き締まる。
OPラスト、階段に腰掛けて煙草ふかしてる待覚がめっさイケ爺。あと三段目のアンサンブルさんが毎公演パターン変えてイチャイチャしてるのも密かに見所。
〆の決めショットの隆善って、もしかして稽古場に持っていった色紙に描いてたポーズ…?
師範代の泉秀も、原作では塩顔無表情だけど二枚目で熱血みある今回の泉秀は舞台版異聞にマッチしてました。待覚と並んだ絵面もイメージ通り。
あと自分を虐めて来ない人には普通に優しい玄灰きゃわいい。今回内容的に玄灰があまり他の一ノ班メンバーと絡めなかったので、次があったらもっと一ノ班面子と仲良くしてる所が見たい…みんなもっと可愛がってあげて…という庇護欲をかき立てられます。中身オッサンだけど。
「一緒に水風呂どうです?」の峯明、顔は見えないけど声色がゲスいのすき。ドSはお前だ。
川に落ちた面子も下の段でそれぞれちゃんとキャラ演じているので全景でじっくり観たいですね。
頭ふるふるして水を払う玄灰が完全に小動物かわいい。貝ヒモあげたい。
お蝶はもう「なんだコイツ」って方向に目一杯振り切ってくれてて嬉しい(笑)。ヘアーもお顔もお美しいし歌唱力も高いのに完璧なイロモノ。この辺から一ノ班の『キャラの濃さ合戦』になってきた感ある。アホかわいい蝶丸コンビの歌に誰よりノリノで踊ってるほーさんマジほーさん。コミカルシーンの懐メロパロディ連発は、最初の打ち合わせ時に私が「異聞はとにかく昭和臭です」ってお伝えした影響もあるのかな。
「先に布団で待ってるぉ♡」のトコだけは(生身の人間でさえなければ)思い切り脳天カチ割ってあげても良かったのよ、桃ちゃん。
舞台版の青藍は融通の利かなさ(と峯明に対する対抗心)がかなり強調されていて、道卓の存在がなかったら一次試験で脱落してたかもしれんね。
青藍の猫嫌い設定、原作より先にやられた…!って思ったけど青藍と玄灰がクソ可愛かったので良し。
イジられまくりのしょーちゃん可愛い。ずっと枕抱きかかえてるのがライナスの毛布感加わってまた愛おしい。1ミリの隙もなく昭和のビーバップスタイルをバリバリにキメてるので(この徹底っぷりに感心。一次試験の最中ですら倒した相手に軽く中指立てちゃう『身体に染み付いたチンピラ感』の作り込みが凄かった)そのギャップが良い。個人的にはかったるそうに首を回すポーズ一番すき。
男の勲しょ…じゃなかった、悪党ソングの時にテヘペロしたり峯明ばりにピョンピョン踊る光明さんがおバカ可愛いんですけどこれが彼の「愉しかった記憶の中で思う存分はっちゃけてる姿」だと気付いてしまうとなんか途端に切ない。
すごい余談だけどライナスの毛布といえばニイ博士のウサギ人形がソレで、でもその移行対象を自ら引き裂く事も出来るのがあの男なんだよなぁと今回の烏哭観てて腑に落ちた。
そしてここのシーンの為だけに『24(ニシ)時間TV』のTシャツ(めちゃくちゃ可愛い)を描き下ろして下さったニイジェンイー(仮)さん、本当にすごい人です。前々から思ってたんですが貴方様ちょっとチート過ぎやしませんかね。
待覚の縞スーツ姿が見られただけでもう私は大満足だったんですが(うじさんのダンス凄いツボる)、あの、いや、すげぇブッ込んで来たな月闇。…じゃなかった、パンダシスターズ。黒嬢はもう全部が酷いし(すごい褒めてる)、白嬢がラッパ呑みするたび笑った。個人的に白嬢の「いい事言う〜〜〜」の腹立つ感じ超すき。
因みに唐橋さん曰くあのシャンシャンちゃんにはちゃんと役作り上の細かい設定がある!と、私と鯛造さんはその設定をご本人から長々と聞かされたのですが、聞き終えた鯛さんの反応が「今年いちばんの無駄な話を聞いた。」だったので察して下さい。
このシーンは稽古時も何バージョンか拝見したのですが(1度は黒嬢がカタコトだった時もあった)、どんだけ白黒がアドリプで大暴れしてもそれを全部拾いつつ進行するうじさんの対応力すごい。
ところで、一番女の扱いが上手そうな道卓は何故かキャバには誘われてないっぽい?道卓連れてったらそっちに女の子取られると思ったか待覚。そこんとこ詳しく。
桃ちゃんは原作の何倍も美男子ですなぁ、約二十年後に頭髪があんな事になるなんて考えたくもないですなぁ。桃醍の過去に関しては設定集に書いた通りなのですが、心を病んだ恋人と暮らしていた頃のイメージは『市場に行こう』って曲なので、ああ見えて彼は大変ロマンチストだったと思います。
一人ずつシーツが外されていく演出凄い好き。暗がりにポツリと道卓の煙草が灯っている絵も、差し込み出す朝日の照明も綺麗。思いを馳せるそれぞれの佇まいも良い。玄灰が躊躇って開けなかった峯明の寝床(内面)から現れるのが光明だという流れがまた上手い。峯明の過去設定や大霜寺に入った経緯は今の所あえて一切触れないようにしているので、ここに峯明だけが混じらないのは正解。
光明の「♪あなたに伝えたい」のひとことの重み。
ルール説明中にもめっちゃヤる気みせてアップしてる抄雲とか、謎の気合い溜めてる義兆とか、なんとかして覚悟決めてる隆善とか、それぞれ細かいし小刻みに震えてる峯明がガチで寒そう。
試験開始からの舞と殺陣がまた大変力強く男臭く、思う存分各々の筋肉を堪能させて頂ける……なんか語弊がある気がするな……うん、あの、もの凄い見所だと思います。異聞におけるわちゃわちゃ感とこの男臭い熱量の両面を存分に観られて本当に舞台化して頂けて良かったなぁと思いました。
ここの一連の音楽がまた素晴らしい。完璧にリンクして盛り上げてる。音楽の効果でシーンの空気や隆起を生み出すという表現方法が紙漫画の世界には絶対に無い物なので、それが素晴らしく効果的だと素直に感心するし正直羨ましくもある。
抄雲の小麦色の肉体と峯明の色白さの対比、このお二方は体格的にもかなり原作イメージに近い。舞台版のほーさんはこの時点で既に彼ら(一ノ班メンバー)との交流を持ってしまっているので、サボりを口実に仲間達と闘う状況を避けている気がする。
スローモーションの動きは滅茶苦茶体力消耗するって某推理ドラマで言ってたよ。誰がどう闘ってるかが気になって目線があちこちに行ってしまう。いつの間にか峯明も真剣に格闘に加わっててよかった。最低限空気読める子だった。
てゆうかこの局面で突然のカーネル(笑)…いや確かに原作でもここでしれっと加わってるんだけど。もし次があったらカーネルは最初からしれっと一ノ班に居るんだろうか。
雪だるま崩壊シーンのギミック、アナログだけどなるほどってなった。原作だと手を離した後でも一部しか崩壊してない(実はほぼ峯明の法力で成り立ってた)んだけど、舞台版は全員の力を合わせた感がとても重要なのでここは全壊が正しい。あの状態からの脱出は全員死ぬ思いだっただろうけど(笑)。
でもってこの一ノ班の横一列シーンがとてもとても、とても好きなのです。
青春。アツい。何度観てもニコニコしてしまう。みんな本物の汗にまみれてるのがまた何とも言えず胸にクるものがありますね。本気で汗だくの男子はなんと眩しく美しいことか。このシーン観て舞台版はフンドシ姿じゃなくて本当に良かったなと思いました。へたり込んでる隆善に無言で手を貸して立たせるしょーちゃんイイ奴すぎて惚れる。
生還を喜び合うシーンは、思い切り抱き合う義兆&丸ちゃんとか桃の髪をイジるお蝶とか皆それぞれに可愛いんだけど、道卓が抄雲のイガグリ頭を乱暴にワシャッてするのが萌える。さんざ暴れた後でも手櫛で簡単キープなお蝶の髪型スゲー(笑)。峯明さんの色白な腹筋がバッキリ浮き上がったり淡くなったりと躍動する様は控えめに言ってエロいですね。……いや真面目に今回、肉体の表現方法についてもっともっと勉強しなきゃダメだと痛感しました。たくさんの良き資料(主に半裸)を魅せて頂けた事にも感謝。
観劇した担当スギノ氏が「ボクはあの蝶庵みたいな身体に生まれたかった」って言ってたから「え、身体だけでいいの!?」と思わず返した。
今回みかしゅんさんから「健邑はこれまでに喫煙経験があったか」と質問された時の私の回答としては
「なんにでも興味本位で手を出してみる男だから、煙草も薬も女も既にひと通り経験はある。たぶんまだその時は、煙草は彼にハマらなかったんだろう。『フーン』って程度で。でも今回、光明にコテンパンにされた後の一服が彼の価値観を変えたんじゃないかと思う。初めてガチで挑んで体力削った後の一服は相当旨く感じた筈だから」。
……まぁそれを言うなら峯明もあんな顔しといて酒煙草エロなんでもオーライで何でも愉しむキワモノだが。
因みに光明の煙草の火の点け方はみかしゅん氏が編み出した『マジシャン風』(ご本人談)です。峯明時代に火加減を特訓したものと思われます(たぶん何箱分かお釈迦にしてる)(隣にいた道卓の煙草まで燃やす)。
仮面で顔が隠れる刹那に峯明がフッと不敵に微笑むのが印象的。開幕と終幕の画を仮面で揃えてるのいいなぁ、思いつきでイラスト描いとくもんだなぁ。
男臭い道卓&青藍をペペッと追い払う蝶庵&丸福の可愛こちゃんズ仲良し。舞台版のお蝶は割と早い段階で丸ちゃんへのガード下げてるよね。
目の前のお月見シートのお客さんにめっちゃ絡んで行ってる抄雲・義兆・隆善のトリオ笑った。
Reload曲で玄奘三蔵のパートだった「♪月が照らすは我が命」の部分を若かりし頃のお師匠様が歌ってるの感慨深い。
「♪俺達ふたり」で珍しくしっかり互いを見据える光明と烏哭の距離感だったり(この道卓青藍の歌を月闇が歌うと歌詞の意味合いがだいぶ変わるねぇ)、階段で気怠げに煙草ふかす渋い月闇さん最高な。
振り返ったら不意打ちで煙草吸ってるほーさんがカッコ良くて「ウヒョッ」って変な声でた。舞台で観てた時は気付けなかった(夜の部配信分ではじめてちゃんと観られた)。その隣でチュッパチャップス咥えてるお蝶を見てはじめてコレ『一ノ班ガラ悪四人衆』イラストの再現なのか!と気付き、いつもながら歌劇伝さんの小ネタ仕込みの細かさに脱帽。ここもそうだけど田村くん峯明の、へにゃっとニコニコなお顔がたまにめっちゃ悪党面(ゴメン)になる瞬間のギャップが結構ツボ。
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……主要登場人物が多くて、あちこち拾っていたらとてつもない長さの感想になりました。我ながら気持ち悪い。
毎回そうなんですが、私の感想が必ずしも正しいわけではない(あくまで観客としての原作者の主観)ので、観劇した皆様が個々に感じたものがすべてです。なので「わかるわかる〜」ってトコだけ拾って頂ければと思います。本心は、いつも製作陣やキャストさんに「ちげーよ!」とか思われてたら恥ずかしいなぁとビクビクしながら書いてるんで。
スタッフ陣やキャスト陣、皆さんがガッチリ手を取り合い、個々の能力とパワーを集めて生み出した、まさに筋肉雪だるまのような舞台でした。皆様本当にお疲れ様でした。
この異聞メンバーにいつかまた逢える事、そして歌劇伝シリーズの今後の継続と発展を切に願っております。
【楽天TV】『最遊記歌劇伝-異聞-』アンコール配信

稽古中に差し入れした色紙の写真↓
